介護の仕事に意義や魅力を感じていますか?

 事業主自身が、介護事業に魅力を感じていなければ、職員が働きがいを持って仕事に取り組むことはできません。

 介護の現場は命を預かる責任ある職場です。職員は、体力的にも精神的にも、また時間的にもギリギリであるかもしれません。
 やったことは、誰も評価してくれないかもしれません。要介護の高齢者本人は意思疎通が難しい状態であることも多いです。

 また、社会保障費の財源不足や、労働力不足など、深刻な課題がたくさんあります。高い壁が立ちはだかっていることは確かです。

 それでも・・・

介護事業は魅力があり、将来性が期待される分野です。
そして何より、利用者や家族に、喜ばれる仕事です。

財源・人手など課題は山積ですが、乗り越えていく手立ては必ずあります。

 駄目だと諦めながらも、辞めることもせずに、だらだらと続けることこそ誰にとっても悲しいことです。

 やるからには希望を持って、一つ一つ解決していきましょう!乗り越える達成感が、また次のパワーになります。



 さて、介護事業を行ううえで心しておかなくてはならない本質は大きく分けて2点です。

「福祉」という社会的責任がある事業である

おもに税金と保険料で賄われる「公費サービス」である

 これは、他事業にない、介護事業の特質ですのでしっかりと心しておく必要があります。職員にも理解させると、働き方に1本筋が通るようになります。


介護事業の魅力

社会保障費の削減や介護の社会問題化など、負の要素が大きいように思われがちな介護業界ですが、多くの事業所はやりがいを持って取り組み収益を上げています。
介護事業の魅力と、⇒注意するポイントをまとめました。

  • 公的事業ゆえに経済的安定がのぞめる
    正しく保険請求をすれば、保険報酬が確実に支払われますから、一般企業でリスクとされる貸し倒れや、いわゆる焦げ付きの心配はありません。そのため、本来の事業運営に力を注ぐことができます。
    ⇒ただし、総合事業や保険外収益など、状況に応じた柔軟な経営変革が必要です。
  • 高齢化でますますの市場拡大の見込み
    人口推計では高齢者数は今後30年は増加の予測です。健康志向が高まったとはいえ、要介護者数も増加傾向にあることは明白です。市場が縮小する経営上の心配は必要ないといえます。
    ⇒高齢者が増えることと、介護保険の要介護認定者が増えることはイコールではありません。
  • 福祉という社会的責任の誇りがある
    福祉事業であるという社会的責任があり、携わる者としては真摯な誇りを持つことができます。事業規模を問わず社会的信用度を得ることができる事業です。
    ⇒職員には過剰に精神性を求めすぎないような配慮が必要です。
  • 地元愛が発揮できる地域貢献事業である
    地元のお客様に喜んでいただける、地域貢献事業です。単に介護をするだけではなく、介護を通して地域連携ができ、地域の賑わいを創出する可能性がある事業です。
    ⇒同時に地域経済を発展させる仕組みが必要です。
  • 都市集中型ではなく地域分散型である
    駅前や都市部に立地する業種業態ではなく、地域に分散して程よい距離感をもって立地する事業です。職住近接が可能な仕事として、職員には魅力ある働く場です。
    ⇒近いから働くという消極的理由だけの採用は要注意です。
  • 人としての生き方や地域文化が学べる
    高齢者と接することで知恵や道徳を学び、事業所運営をしながら地域文化や一般常識を学ぶことができます。
    ⇒生活習慣や地域文化など、日常業務を通して継承していきましょう。

介護事業の役割

 これからの介護事業に期待されることは、要介護者の自立支援だけではありません。
 地域連携の拠点としての役割や、若い職員の人間教育、地域文化の継承など、介護保険制度の枠を超えた役割りが求められます。

 そうした、存在意義は他業種に比して際立つ「地域分散型」であることと関わる人が持つ「ホスピタリティマインド」です。立地と人材という優位性を生かした取り組みは、今後ますます期待されています。

  • 増える要介護者や認知症患者の受入れ
    介護離職や老老介護などの社会問題を解消し、要介護者本人と周りの人すべての幸せを支える役割りがあります。
  • 介護予防の啓蒙と支援事業
    要介護とはどういう状態か、そうならないためにはどうしたらよいかなど、介護の知識を生かした啓蒙活動が期待されます。
  • 地域連携の拠点としての役割
    地域に点在して立地する事業所は、地域連携の拠点として役割が期待されています。熱中症予防の立ち寄り所など、みんながやることで地域の安心感につながる取り組みなど、発想は無限大です。
  • 地域文化、生活文化の継承
    生活支援や季節行事の実施などを通して、その地域ならではの風習や慣習が、介護事業所の中で継承されています。高齢者へのサービスでありながら、若い職員がそうした文化を学ぶ場になっていることは大きな意義があります。
  • 人間教育の場として日本の底力増強
    高齢者介護は、介護サービスを一方的に行うだけではなく、高齢者からの知恵や教えをもらうことが多分にあります。また介護を通して生きることの意味を考えたり、思いやりについて深く考えたりします。職員や関わる人たちの人間教育の場として日本の底力増強に役立っています。

デイサービスのネットワーク性

 
 デイサービスの魅力として、単体では多種多様な地域性がありますが、総合的にみても素晴らしい地域資源であることが分かります。

 全国約4万店でコンビニと同じくらいの数と言われますが、立地性では全く異なります。都市部や沿岸部に集中するコンビニと違い、デイはまんべんなく立地しています。これがネットワークできれば、農協や郵便局に代わる機能が生まれるのではと思うほどの素晴らしい地域資源です。

 ただ残念ながら行政区で分断されているので、ネットワーク性が全く活かされていません。
 民活でネットワークを使う動きが出てくれば、デイにもなんらか収益が発生する可能性もあるのではと期待しています。

(画像はかなり雑です。沖縄、鹿児島の一部が表示されておらず、申し訳ございません)

デイとコンビニ

介護職未経験の方へ

 そもそも「介護事業」について、分かっているようで分かっていないことがたくさんあるはずです。

 介護職に携わるには、必ずしも有資格者でないといけないということはありません。(もちろん知識や技術は大切です)

 個人のお宅を訪問して介護サービスを行うには資格が必要ですが、それ以外はおおむね可能です。有料老人ホームや特別養護老人ホームなどの施設や、デイサービスなどの事業所で、介護サービスを行うことは法律的には問題ないということです。

 生活相談員については、資格要件が必要ですが、介護職歴については特に定めはありません。社会福祉主事任用資格(大卒で指定の3科目履修者など)で就く人は、介護職未経験である場合も多いです。

 また、管理者や施設長などのマネジメント職については、資格要件も定められていません。介護職経験よりも、他業種でもマネジメントの経験があったほうが望ましいと考えられます。

 生活相談員や管理者、施設長には、実務能力やコミュニケーション能力が求められますが、介護保険の知識がまったくゼロでは仕事にはなりません。

 ここでは、そもそも介護保険制度とは?ということをご説明いたします。もちろん、難しく考える必要はありません。おいおい分かっていくことですので、細かいことはその都度ちゃんと調べて知識として持つように心がけてください。

介護保険制度は厚生労働省が所管です

 介護保険制度は厚生労働省が所管です。「厚労省が」とか「国が」という言い方をしたら、厚生労働省の老健局のことだと思ってください。

 介護保険制度の一番おおもとの説明は、厚生労働省のホームページをご覧ください。下記の資料には、介護保険制度の経緯(2000年施行)や、旧体制との違い(措置から契約へ)についても詳しく書かれています。

「公的介護保険制度の現状と今後の役割」平成27年度 厚生労働省 老健局総務課

 この基本的な考え方は、介護事業では常識と言われる内容ですが、一般にはあまり知られていません。細かい数字を追うことは必要ありませんが、一通り目を通しておくと良いでしょう。

 おもなポイントは下記のようなものがあります。「措置から契約へ」とか「3年ごとの法改正」、「要介護度」「自己負担分」などという言葉が良く出てきます。どういうことなのか概ね掴んでおくと良いでしょう。

  • 2000年に施行され、措置(好き嫌い問わず行政が決める)から契約(本人が自由に選択できる)へをスローガンに民間業者の積極的な参入が始まった
  • 自立支援・利用者本位・社会保険方式が基本の3本柱
  • 3年ごとに見直し(法改正)が行われる(直近は2017年度法改正)
  • 要介護認定により介護度(要支援1、2、要介護1~5の7段階)が認定される
  • 介護サービスは、訪問サービス、通所サービス、入所サービスなど多岐に渡る
  • 利用者の自己負担は1~2割(所得に応じて異なる)

27年度法改正の激震

 介護保険制度の見直しは3年ごとに行われますが、直近の27年度法改正ではこれまでにない激震が走りました。

「平成27年度介護報酬改定の骨子」 厚生労働省

 震源は社会保障費の削減です。事業者にとって打撃なのは当然のことながら介護報酬が減らされることです。その他にも取り組みの大枠が変わりました。それが総合事業です。ただし完全移行までには自治体によってスタート時期がずれますので、こちらも要注意です。

  • 総合事業の実施(介護予防・日常生活支援総合事業)
  • 利用者負担割合と限度額の引き上げ(所得による)
  • 介護報酬改定(事業者の保険報酬実質減)

 その他にも、特養入所条件が要介護度3以上になったことなどがあります。

「介護予防・日常生活支援総合事業の基本的な考え方」厚生労働省老健局振興課

コンプライアンスとエビデンス

 介護事業は、介護保険制度下において指定(いわゆる許認可)を受けて営む福祉事業です。おもな収入は保険報酬の、公費サービスです。

 保険報酬を受け取るには、正しい書類が大切になります。法令を遵守し(コンプライアンス)、保険請求の根拠となる書類(エビデンス)の整備が欠かせません。
ただハートフルなケアーをすればよいというものではなく、現実的には書類を完璧に整える実務面が重要になります。

 ハートフルケア―については、現場の介護職員に任せるとして、書類管理については生活相談員やマネジメント職員の重要な責務です。書類作成のポイントやあるべきかたちについて知っておいたほうが良いでしょう。

 介護サービスを行うには、本人や家族の希望を聞き状態に合わせたサービス提供の計画から始まります。
 そして、計画に沿った介護サービスを提供し、その成果の検証を行いながら、次のサービス見直しにつなげていきます。この一連の流れを介護のPDCAと呼びます。

 介護のPDCAにはそれぞれ書類が発生しますので、それら書類を管理することがマネジメント職員に求められることになります。

 行政担当者が介護事業所に来て書類や設備等のチェックを行うことを実地指導といいます。実地指導は、適切な事業所運営のために指導に来てくれるわけなので、恐れることはないのですが、実地指導で指導されたことをきちんと改善されなければ監査になりますので油断してはいけません。

 実地指導と監査については、講義中にも詳しい説明があります。どのようなことがチェックされるのか、どのような事前準備が必要なのか、現場経験豊富な講師がリアルにご説明します。

介護の現場

 介護職員はみな、介護の仕事に誇りをもって取り組んでいます。3Kと言われることもある過酷な業務ですが、利用者に喜ばれ、人の役に立っているという意識で頑張っています。

 介護の現場は精神的にも肉体的にも重労働と言えます。そのような仕事に従事する人には、介護の仕事を甘く見るような発言は許せない気持ちになることを理解しましょう。特に他業種からの転身は、「現場を知らないくせに」と思われても仕方ありません。例え前職が介護以上に厳しい職場だったとしてもです。

 介護の仕事は、介護職員以外にも、看護職、理学療法士、栄養士等々、色々な専門職が関わります。1人の利用者に複数の専門職が関わるチームケアーです。

 連絡調整や共有認識が重要ですが、忙しい現場でなかなか情報共有されない難しさもあります。人間関係もちょっとのことで不和を生じやすい実態もあります。それらは対人援助職ならではの事情がありますので、そのことも理解してマネジメントを行う必要があります。

 介護職員は一人一人は福祉の志があり、根は優しい人が多いです。働きやすい環境を整えればやりがいをもって取り組んでくれます。

 マネジメントをしっかり行い、介護職員が笑顔で生き生きと働く職場になることを期待します。